高濃度ビタミンC点滴
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高濃度ビタミンC点滴療法
がん治療の新しい選択肢
高濃度ビタミンC点滴療法(以下IVCと表記)は体に優しい、副作用のほとんどないがん治療として注目されている最新医療です。この治療法はがんの初期、再発予防から手術・放射線・化学療法が無効の進行がんの患者さんまで幅広く受けていただくことができます。
IVCの歴史
ビタミンCががんに効果的であることは、半世紀以上前から一部の医師たちによって知られ実践されてきました。1970年、「がんとビタミンC」という本を書き世界に多大な影響を与えたのがアメリカのライナス・ポーリング博士でした。博士は地上でただ一人、ノーベル賞を2回受賞(化学賞と平和賞)された天才的な科学者でした。
博士や仲間たちにより「ビタミンCの大量投与ががんの治療・予防に有効」との説が唱えられ、臨床的にも実証されつつあったところ、当時の主流医学会から猛反発を食らうこととなりました。結局権威筋の反対論文(後に実験方法に問題があったことが判明)によりポーリング博士の説は否定され、その後ビタミンCの研究は一気に廃れてゆきました。しかし、ポーリング博士やその仲間・弟子たちは細々ながら研究を続けていました。
そして2005年、アメリカ国立健康研究所(NIH)、国立ガン研究所(NCI)、国立食品医薬品局(FDA)の科学者達は共同で「薬理学的な濃度(超高濃度)のビタミンCはがん細胞を選択的に殺す」という論文をアメリカ科学アカデミー紀要に発表しました。2007年には同じ科学者グループが2005年の論文が正しいことを動物実験で確認し、同医学誌に発表しています。その後IVC療法のがん治療への有効性を認めた報告が相次ぎ、現在はアメリカやカナダの多くの医師らがIVC療法をがん患者に行うようになり、この治療を受ける患者の数は急増しています。
現在、アメリカのカンザス大学、ジェファーソン大学、カナダのマギル大学、日本の東海大学医学部などで、卵巣がん、子宮がん、悪性リンパ腫、肺がん、すい臓がん、進行がんの患者さんについてIVC療法による治療研究が行われています。
当院は点滴療法研究会マスターズクラブの会員であり、点滴療法研究会の研修を受け、アメリカで実施されている「高濃度ビタミンC点滴療法の標準的プログラム(Riordan IVC protocol)」と同じものを患者さんへ安全に提供します。
IVCの抗がん作用の機序について
ヒトのすい臓がん、悪性黒色腫、大腸がん、骨肉腫の培養細胞は、ビタミンC濃度が400mg/dlに達すると死んでしまいます。ビタミンCが高濃度になるとガン細胞の周囲で鉄などの微量な金属とフェントン反応を起こして過酸化水素を生成します。正常細胞はカタラーゼという酵素が過酸化水素を中和するので影響を全く受けません。一方、がん細胞の多くはこのカタラーゼが欠乏しているため過酸化水素を中和することができません。
がん細胞の中に取り込まれた過酸化水素は、がん細胞のDNAやミトコンドリアを傷害し細胞死を誘導します。過酸化水素は活性酸素種の一種、別名オキシフルのことで、わかりやすく言うと、ビタミンCを点滴することによって体中にオキシフルが増えてがん細胞を消毒してくれる、ということです。
またビタミンCにはコラーゲンを生成・強化する働きがありますので、高濃度にビタミンCを点滴投与することにより、がん細胞の塊の周りを取り囲むコラーゲン繊維の膜を強化して、がんの発育・転移を阻止する働きもあるのではと言われています。
高濃度に点滴されたビタミンCは、正常細胞に影響を及ぼすことなくがん細胞にだけ強い障害を与えることができるのであり、また重篤な副作用もありません。チャレンジする価値の十分ある治療法と言えます。
※図をクリックすると拡大してご覧になれます
ビタミンC濃度と4種類のがん細胞の生存率
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血液内外に入ったビタミンCによる過酸化水素発生メカニズム
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過酸化水素がガン細胞を殺す3つのメカニズム
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この治療法が適している方とは
IVC療法が適応となるのは、
- 標準的ながん治療(手術療法・放射線療法・化学療法)が無効の場合
- 標準的がん治療の効果をより確実にする
- 標準的がん治療の副作用を少なくする
- 手術後の再発予防
- 手術までの待機期間中の転移予防
- 代替治療として希望する場合
などです。
有効な抗がん剤や放射線治療がある場合は併用を推奨します。
この治療が有効ながんの種類についてはまだ研究段階です。
副作用について
アメリカのカンザス州ウイチタ市にある国際人間機能改善センターはIVC療法で有名です。これまでの15年間に3万件以上のIVC療法を実施してきました。このクリニックでは副作用によって死亡に至った例はありません。実際には殆ど副作用のない安全な治療だと言えます。
1例ですが点滴初日に腫瘍から出血を起こした事例の報告がありますが、大事には至っていません。このような腫瘍出血はこれまでの抗がん剤の投与でも見られる副作用です。これを防ぐために初回はビタミンC15gから開始し、徐々に投与量を増加させます。
G6PD欠損症という赤血球膜の遺伝性酵素異常がある方はこの治療を受けることができません。ビタミンCを大量に点滴すると容血して赤血球が壊れ、重度の貧血になることがあるためです。当院では25g以上の高濃度ビタミンC点滴療法を受ける場合に必ずG6PDの検査を実施します。
透析中の腎不全の方はこの治療を受けることはできません。心不全、大量の腹水、強い浮腫のある方は、点滴で水分を血管内に入れることで病状の悪化を来す恐れがあるためにこの治療ができない場合があります。
IVC投与の実際
最初はビタミンC12.5gから点滴を始め、25g、50gと増量します。血液中のビタミンC濃度を測定し、投与するビタミンCの理想的な投与量を決定します。典型的な例では週に2回の点滴で6ヶ月間継続、その後の経過が良ければ週1回を6カ月、さらに2週に1回を1年、その後は月に1回行います。ビタミンCの量と点滴頻度は病状によって変えていきます。
なお、この治療を続けることにより免疫システムの増強、ガン性疼痛の軽減、食欲の改善や体調の改善が期待できます。
※図をクリックすると拡大してご覧になれます
点滴中・後の血清ビタミンC濃度
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ビタミンCを投与された進行ガン患者とコントロール群の生存率
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使用する輸入ビタミンC点滴製剤について
国産の点滴用ビタミンC製剤(1アンプル2g入)は防腐剤が添加されています。国産品でIVC療法をすると防腐剤が大量に体内に入ってしまうので、私たち点滴療法研究会の医師は防腐剤の添加されていない、IVC療法専用のビタミンC製剤(1バイアル25g入)をアメリカから輸入しています。このために点滴料金がどうしても高くなってしまいます。御了承下さい。
料金について
健康保険は使えません。自費診療になります。
ビタミンC 25g:1回6800円
50g:1回10400円
75g:1回13100円
G6PD検査:8400円
ビタミンC血中濃度測定:3800円
[参考・引用図書等]
「超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック」(角川SCC:柳澤厚生著)
「ビタミンCがガン細胞を殺す」(角川SCC新書:柳澤厚生著)
「超高濃度ビタミンC点滴療法」(PHP研究所:水上治著)
「希望の抗がん剤点滴ビタミンC」(河出書房新社:水上治著)
「ビタミンCはガンに効く」(ディスカバー携書:澤登雅一著)
「高濃度ビタミンC点滴療法Q&A」(点滴療法研究会パンフレット)